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2014年2月26日 (水)

よもやま綺譚 天下の百万都市なり竜王都 その1

 よござんすか皆様。「講談師、見てきたように嘘を言い」というのは、よもやま話の基本であります。この竜王都についても同じであります。異世界、異世界と最近の流行りで言いましても、どんな世界なのかは、なかなかに解り難いものでございます。そこで、講談師たるIttohが、少し、よもやま話をしていこうと思って描きました。
 まず、この世界は六大氏族が覇を競う異世界ではありますが、古の「契約」により大規模な戦には制限が加えられております。特に、氏族を滅ぼすがごとき戦は戒められております。これが、まずは、この異世界の特徴であります。
 また、六大氏族の中では、竜族の権威というものがあります。竜族は、天竜、火竜、水竜、地竜、風竜の五大氏族で構成されていますが、天竜は天主様とも言い、竜族の頂点にたっておられます。天竜は、その膨大なる魔力を、自分自身の意志で封じられておられます。暴れると天地が砕けるとも言われますので、火竜、水竜、地竜、風竜の各部族は、強大な魔力をお持ちではありますが、せいぜいが山一つ分と言いますので、世界一つ分の天竜様にはかないません。この封じられた力こそが、「契約」を「契約」として成立させているともいえます。
 竜王様のお膝元ですが、竜王様は、聖都に御住みで六大氏族会議では、竜王府の長たる執政様が代理として出席されます。火竜、水竜、地竜、風竜の方々も、聖都にお住まいの方々が多いので、それぞれの氏族から執政官が派遣されています。執政官は竜族の方であることが多いですが、現在の竜王府執政はライガ様で、純粋な竜族ではなく、剣神様と獣族の間にお生まれになった方でございます。
 剣神様は、戦災孤児で竜王都で育ち、剣士として冒険の旅を数十年に渡って続けられ、様々な伝説を各地に残されております。最大の伝説は、"剣聖"様との戦いで、千年不敗の伝説が終わり、剣神様の伝説となったのであります。

多分、嵐のような平凡な日々04

 到着すると、ユゥナ叔母様が迎えに出てくれていた。六さんが傍に付いている。六さんは鬼族で、料理の腕は絶品で、父様が好きな料理を作ってくれる料理人だ。
「早いな。ユゥナ」
「六さんに、船が見えたら知らせてとは言ってましたから」
「六。船を見張っていて料理がおろそかになっているというのは無いだろうな」
「まさか。大先生を迎えるのに、料理に手は抜けませんや」
「姜花は、もう来ているのか」
「へぇ、すでにお待ちです」
「ならば、料理は少し後にしてくれ」
「へい。了解しやした」
「それでは、こちらへどうぞ。今日は、離れをご用意させていただきました」
ユゥナ叔母様が案内で、屋敷の庭を回って、別棟になった建物に入っていく。一つの家として造られた感じの離れだ。
 部屋には、既に姜花さんが手酌で飲んでいた。襖を開けると、立ち上がって父様を迎えに自分の隣に座布団を動かして座らせる。私のことは見ていないみたいだ。私は、下座に座る。まだ、食事等は出ていない。
「ようやく来たわねセンセ」
「姜花。久しぶりだな」
「えぇ。最近は、姫様を迎えて、お見限りになったと思ったわ」
「俺ももう爺いだぞ、お前のように、綺麗な姿ではいられないさ」
「あらあら、まだまだ素敵ですよセンセ」
父様は、姜花さんにはなぜか弱い。昔、色々とあったらしい。マーヤ母様は、父様に勝てなかったけど、剣の腕は超一流で、同じ武術指南役の胡青様よりも強いとの話だ。
「すまん。今日はニィナの話で来た」
「あらあら、リィナ姉様に似てきたわねぇ。彼女を私のところに」
「あぁ、頼みたいが良いか」
「私でいいのかしら、リィナ姉様の忘れ形見でしょ」
「お前にしか頼めない。リィナが弟子にとったのはお前一人だ、リィナが選んだお前にニィナを頼みたい。よろしくお願いする」
父様は、あらためて、座布団を外して座り、姜花さんに頭を下げる。
「貴女はどうなの、ニィナ。私で良いの」
私も、あらためて、父様と同じように、座布団を外して座り、姜花さんに頭を下げる。
「父様が、信じられた方を信じます。よろしくお願いします」
「ま。良いでしょう。今日は、泊られるわけではないのですね」
「すまぬ。マーヤが待っている」
「マーヤの名前は卑怯です。お泊まりは、姫様のところなのでしょ」
「いや、今日は、お前に逢うと言ったから、姫の元には行かない」
「あらあら、相変わらず律儀なセンセですこと。今日は、私も独り寝なのですね」
「すまない・・・」父様が、再度、頭を下げる。
部屋の外に気配がする。頃合いを見計らったように、ユゥナ叔母様の声がする。
「お食事の支度ができました。お運びいたします」
六さんの食事は、美味しいはずなのだけど、あんまり味を覚えられなかった。

多分、嵐のような平凡な日々03c

 ようようにして、10歳の時となる。父様に連れられて、叔母様のお店「紅輝楼」に行く。屋敷からだと、川を船で下って1時間ほどで着く船宿兼料亭といった感じの店である。川を船で下るのは好きだ。風は肌寒いけれど、季節が少しづつ暖かくなっているのを感じる。
もう少し暖かくなったら、マーヤ母様も少し体調が戻られる。マーヤ母様が元気になられたら、父様も元気になる。今度は、マーヤ母様と一緒に叔母さまの店に行けると良いなぁ。
 大川は、聖都から南に流れている川だけど、両岸に堤が築かれている大きな川だ。ただ、聖都から西に大きく流れていく竜王河のように、対岸が見えないほどではない。対岸が見えないほど広いと"河"と呼び、対岸が見えるくらいだと"川"と呼ぶそうだ。竜王都には、大川、千川、早川と大きく三つの川が流れていて、川を縦横に小川のように運河が造られて、運河を使うと、たいていの場所には辿り着けるようになっている。屋敷から海までが2時間くらいで、川を竜王都のほとんどの場所でも2時間くらいでは行けるようになっている。竜王都は住民が百万を越え、今では百三十万をぐらいだと、兄様が言っていた。竜王都だと、どこに行っても人がいっぱいいるのは確かだ。
 「紅輝楼」は、大川にかかる竜王橋から、少し上流に向かったところにある。間口はそれほど広くは無いが、かなり大きな館が「紅輝楼」だ。一つの建物だけではなく、幾つかの建物が敷地の中に建てられていてるようで、私も中がどうなっているかは良く知らない。案内されるて部屋に着くまで、騒いでいる声は少しするが、姿はあまり見ないような造りになっている。

2014年2月16日 (日)

多分、嵐のような平凡な日々03b2

 冒険者と父様の話が、どのようなものであったかは良くは知らない。弟子にしてくれって頼みに来たらしいけど、断ったそうだ。この夜、父様からは、小太刀を貰った。まだ私には、両手でないと扱えないけど、とっても綺麗な小太刀だった。
「この小太刀は、リィナが俺に造ってくれたものだ」
「リィナ母様が」
すこし照れたような父様は、こんなこと言うと怒られそうだけど、なんか可愛かった。
「あぁ、子供の頃に夢で見た刀を形にしてくれたものだ」
「子供の頃の夢、ですか」
「あぁ。夢の中でも俺は、剣を振っていて、目覚めてもやっぱり剣を振っていた」
父様は、剣の修業をしながら、剣士として極め、剣神と呼ばれるまでになった。魔族や獣族、妖族や鬼族、竜族すらも倒せる、人族最高の剣士、それが父様だ。
「勝てば、恨みを積み上げる。ニィナは、剣士を目指すならば覚悟しなければならない」
「覚悟ですか、」
「そうだ。試合に勝てば、恨みを積み上げる。負けるとすべてを失う。それが剣士の覚悟となる。俺としては、できれば、そんな世界にお前を送りたくは無い」
「覚悟ならあります」
「戦えば、殺し合うこともある。今日のお前は、相手を殺そうとした。そうだな」
「はい。殺さなければ、殺されると思いました」
「お前は、殺されるから殺そうとしただろう」
「は、はい、」
「それは、覚悟では無く怯えだ」
「いいか。ニィナ。相手を殺さぬ覚悟を持て」
「殺さない覚悟」
「そのために、すべてを失うこととなっても、相手を殺さない覚悟だ。その覚悟を確かめるまでは、その小太刀を抜くな」
「女であり、剣士を目指す者であれば、そのすべてを失っても、相手を殺さぬ覚悟があってはじめて、剣士として剣を振れるそうだ」
「そうだ?」
「あぁ、お前の母リィナが言っていた。女を剣士として認める時は、その覚悟をさせろと。細かくは、わからん」
「父様ッ」
「もし、本当に剣士を目指し、覚悟があるというなら、父ではなく、姜花のもとで修行となる。彼女は、唯一人のリィナの弟子だ」
母様の弟子・・・竜王が武術指南役姜花。最強の女剣士、"剣王"の称号を持つ一人。父様の"剣神"、玲様の"剣聖"に次ぐ、剣士の称号。負ける覚悟とか失うってのは、嫌だし、よくわからないけど、やる気がでてきた。彼女に認められれば、父様に認めてもらえる。私は、剣士になる!

多分、嵐のような平凡な日々03b1

 俺は、治療をしながら相手を見ていた。年齢はかなり高い。60を越えたくらいかなぁ。このくらい年寄りの方が、元気だよなぁ・・・
「あんた。強ぇなぁ・・・あ。俺の名は、内藤一樹だ。カズキって呼ばれてる」
「内藤・・・俺の名は、一刀斎だ。伊東一刀斎」
「一刀斎かぁ、やっぱし転生者か」
「転生・・・あぁ、前世の記憶か。夢でみたような形でなら覚えている。お主もか」
「あぁ。自分が死んでなるとは思わなった」
「何故、前世の記憶があると思ったのだ」
「料理だよ。こっちに来て、食べるのは肉とかパンとかで、竜王都で米の飯を食べた時は、嬉しくて、涙流しちまった。そこで、米の飯が食えるようになったのは、この20年くらいだって聞いた。剣神様が、鬼族から種籾を貰って造り始めたって聞いたぜ」
「あぁ。あれか。なかなか造るのは難しいが、子供達が頑張ってくれたからな」
「そうか。こっち来て肉とかは食べれたが、米の飯は美味しかった。ありがとう」
「まぁ、同郷の者に逢うとは思わなんだ。江戸の町はどうだ」
「江戸って、えらい前から転生したんだな。今は東京って名前になってる」
 伊東・・・・一刀斎って、確か、一刀流開祖が、伊東一刀斎って名前だった。
「あんた、将軍家指南役の小野忠明って人の師匠なのか。江戸時代の剣豪が、こっちじゃ剣神かよ。やっぱし、向こうでチートは、こっちでもチートなのかよ」
「チート?・・・剣豪とはな。忠明を知っているのか」
「直接は、無理。数百年前の人だよ。子孫って人の剣を見たことがあるくらい」
「ほぉ。小野家は、数百年続いたか、そして一刀流が続いているとは、嬉しいものだな」
「あぁ、徳川幕府とか滅んだり、国が異国に占領されたりもしたけど、ずっと続いていたみたいだよ。俺は、話に聞いたくらいだ」
「ほぉ、その前世の記憶を持つお主が、俺に何のようだ」
土下座って奴をする。どうしてもこの人の力が要るんだ。俺には!!
「頼む。同郷のよしみでも、なんでも良い。俺を弟子にしてくれ」
「断る」
え。そうなの?土下座って昔の人に効かないの?それって何。どうすればいいの?

多分、嵐のような平凡な日々03a

始めて父様と対峙して、2年の時が過ぎた頃、門の前で箒で掃いていると、巨躯に大きな剣を背負った、旅姿の男がやってきた。冒険者のようだ。殺気が溢れるように歩いてくる。だけど、父の気圧には届かない、このくらいだと木太刀が振れる。手にしていた箒を近寄る男に向かって構える。
「なんだ、嬢ちゃん。俺の気に反応したのか。まだ子供じゃねぇえか、怪我するぜ」
「ここは、あなたのような方が来る場所ではありません。帰りなさい」
「へぇ、一人前じゃねぇか。これでもかい」
背負った剣を抜き、構える。殺気が溢れるようだ。
「屋敷の前で剣を構えるなど、言語道断ッ」
構えた箒を突きだす。男は、なんでもないかのように、剣で箒を斬る。その刹那に、箒を引き、柄の先を剣で斬らせる。柄の先が、槍のように尖る。
「ハァッ」
そのまま箒の柄を、相手の心臓に向かって突き抜く。男は、慌てて引くが、柄の先が一寸ほど刺さる。
「このぉ、ガキャぁッ」
血が流れるにも構わず、大剣を横薙ぎに振りぬいてくる。
「チッ」
そのまま箒の柄で、相手を突きぬく。こっちが速いか、あっちが速いか。冒険者の胸を突きぬいたものの、そのまま大剣が振りぬかれてくる。相討ちッ。
その時、大剣の軌道が扇で止められた。
「なんだぁ」
膝を着き、倒れそうになりながら振った大剣を止められた扇をみながら、男は愕然としていた。
「俺に何の用だ」
「父様ッ」
「お前がぁ。グフォ」
吐血する。肺腑に刺さったようだ
「動くな。柄を抜くな。手を離せ、今抜くと、出血して死ぬ」
「は、はい。ツッ・・・」
手が開かない。なんか自分の手じゃないみたいだ
「動かんのか」
「は、離れません」
「そうか」
父様は、腰の小太刀を抜くと、そのまま柄を私の手の先から切り落とした。私は、そのままペタンって、座り込んでしまった。
「自分で治せるか」
「まぁな」
男は、冒険者らしく自分で治癒を始めた。
「立てるか、ニィナ・・・この男は、私に話があるようだ。マーヤ母さんのところにいっていなさい」
「え。でも・・・」
「行きなさい」
「は。はい」
父様を、怖いと思ったのは、初めてだった。

2014年2月15日 (土)

多分、嵐のような平凡な日々02

 ニィナの母リィナは、生まれて直ぐに賊に襲われ、命を落としたので覚えていない。私にとって、母はマーヤだ。だが、マーヤはいくら母様と呼んでも、私のことは、ニィナ様と言うので、少し哀しかった。
何故と問うと
「リィナ様は、私にできないくらい、父様を支えた立派な方です。今では、玲姫様が奥様ですが、リィナ様が生きている間は、奥様はリィナ様でした」
「でも、父様はマーヤ母様を愛してます」
「当たり前です。私は、自分を愛していない男の子供は産みません」
と言われた。そんな時の母様は、頬を赤く染めて、とっても綺麗だったのを覚えている。
 マーヤの子供達は、様々な仕事をしているが、剣士はいない。父様が、見込み無しと言ってしまったからだそうだ。
 父が剣神だと知ったのは、かなり後だった。父は、強かったが、あまり剣を抜いて戦わなかったので気付かなかったし、誰も教えてくれなかった。一番身近な、マーヤ母様は"イットウ"様って呼ぶし、玲様は"貴方"と呼ぶし、"イットウサイ"と呼ぶ人はいないのだ。
 5歳の時に、父に小太刀を渡されて、始めて立ち会った。父は立っていただけなのに、凄まじい威を放ち何もできなかった。それでも父の前に立ちたくて、必死で耐えていた。耐えることしかできなかった。私が、気を失った。その夜、悔しくて、泣いていた私にマーヤ母様が教えてくれた。
「何を泣いているのですか。剣神の前で30分も立っていられた相手は、ほとんどいません。ニィナ様には、剣士としての才がおありです」
 その時、初めて父が、誰かを知ったのだ。

多分、嵐のように平凡な日々01

 木太刀を構える姿は、凄まじいまでに凛々しく、動きは力強さに研ぎ澄まされたようだとは、吟遊詩人の唄いにあるが、実際に"イットウサイ"の剣を見た者は少ない。"イットウサイ"には、弟子が多く、竜王指南役となった胡青と姜花もまた、弟子の一人であり、彼らの戦場での実績や戦績も多く有名で、"イットウサイ"は、彼らの師として知られているが、彼自身は、それほど知られてはいない。
 一緒に歩く、娘のニィナが、髪をポニーテールにして、後ろに流し、すらりとひきしまった肢体を、当世風の男装束で飾り、太刀を小太刀と共に腰にさして、鍛え上げた体は風を切るように動いていく。そんな男姿の娘が方が、道行く人の注目を集めるため、好々爺な雰囲気を持ち、足跡も音もたてず、気配をさせずに歩く爺さんに気付くものは少ない。
 イットウサイの住まいは、竜王都から川を上って、一時ほど離れた古い開拓村に数百年前の開拓当時から建てられた玲姫様の屋敷であり、敷地に獣族の冒険者で剣神の弟子であるマーヤを院長とした学院が併設されたのが3年前となる。村の者は、剣聖様の屋敷と新たに建てられた学院として知られているため、剣神その人が住んでいることは、あまり知られていない。
 時折、様々な剣士や冒険者が訪れることもあるが、有名な冒険者某が、屋敷の門前で箒で落ち葉を集めていた、学院の子供に負けたりするため、かなりの覚悟が必要な屋敷ともなっている。その時、有名な冒険者に勝った子供が、当時7歳のニィナだったりする。

エピローグ? その3 多分、嵐のように平凡な日々へ

「もうしばらく、こうしていても良いですか」
「あぁ・・・」
・・・閑話休題・・・
だだだだだだだ・・・静寂に包まれた部屋に向かってくる足音がある。
「父様、マーヤ母様、食事はお済ですか!稽古をお願いします」
セリフとともに、寝室の扉が開け放たれる。
「ニィナ様。そのように扉を開けてはならぬと申しておりますのに」
「ダメです。このくらいの気合が無いと、この扉は開けられません」
抱き合っている二人に、真っ赤になりながら喋る。
「はははは。それは確かだ。まぁ良い。立木撃ちは終わったのか」
「はいッ。千回撃ち込みました」
「何回くらい切れた」
「はぁ」
「立木撃ちで、立木が人だとしたら、何回くらい切れたかと聞いている」
「そ。それは」
「立木は人ではない。また、回数を撃ったから、強くなるわけでも無い」
「は。はい」
「汗を流して、着替えて来い。俺は、庭に居る」
「は。はいッ」
だだだだだだだ・・・風のように駆けていく音が遠ざかっていく。
「ニィナ様は、腕を上げられましたよ」
「見ていたのか」
「はい。私に見せたいのでしょう。安心できるように、もう守られるだけの娘ではないと信じて貰うために」
「そうか・・・俺としては、守られるだけの娘でいて欲しいのだがな」
「無理ですよ。リィナ様の娘です」
「そうだな」
「今日は、ニィナを連れて、義姉上のところに行ってくる」
「はい。いってらっしゃい」
軽く口づけをして別れる。それは、多分、嵐のように平凡な日々に繋がっていく。

2014年2月14日 (金)

エピローグ? その2c

「イットウ様と旅をして楽しかったのです」
「俺も楽しかった。多くの戦に出て戦ったことは、好きではなかったが、旅をしているのは楽しかった」
「はい。こうやって子供達を見ていると、本当に夢のようなのです」
「そうだな」
「イットウ様。昔、蝶の話をしていただきましたよね」
「あぁ、夢の中で蝶になった男が目が覚めた時、自分が蝶の夢を見たのか、それとも自分が蝶の見ている夢なのかという話か」
「そうです。そのときは、あまりよくわかりませんでした。自分は自分なのにって思ってたんです」
「それで良い。俺は、子供の時に見た剣士の夢。そして、今の俺もまた剣士となっている」
「今の私は、ちょうどそのとっても幸せな夢の中にいるようなのです」
「これは、夢ではない。たとえ、この一生が、次の一生で夢のように見えたとしても、今を生きているのは、マーヤで、そして俺だ」
「こうやって、イットウ様に抱かれていると、夢でも幻でも良くて、このまま居られれば良いって思っています。そして、もう一度、生まれる時があったら、またイットウ様の傍にいたいと思います」
「また。戦の中で、今度は死んでしまうかもしれん。それでも良いか」
「はい。構いません」
「そうか・・・まだ、しばらくは、マーヤと暮らしていたい。辛いかも知れぬが、できる限り長く生きていて欲しい。それが、私の願いだ」
「本当に良いのですか。イットウ様は、旅が好きで、色々な場所に行くことと、強い者と戦うことが好きですのに。この数年は、私が、独占してしまってます」
「構わん。千数百年の時を剣を磨き続け、剣聖とまで言われた剣士、羌族の玲と戦い、まがりなりにも勝つことができた。竜王陛下からは、剣神との称号までいただいた。剣士としても、最高の栄誉すら手に入れることができた。子供達も成人し、手もかからん。後は、アカネくらいだが、しばらくは俺も死ぬつもりはないし、玲や子供達に任せることもできる。後は、俺の好きなように生きる、誰にも邪魔はさせん。だから、マーヤの傍にいる」
「本当、相変わらず、子供のような目してます。イットウ様・・・」
「そうか。俺にはよくわからん。ははははは・・・」
笑い声が、部屋いっぱいに染み渡っていくようだ。

エピローグ? その2b

 屋敷の窓には、結界を張ってあり、冷気入らぬように調整し、火の魔晶石で温めている。
窓際にベットを置いてある。この窓から見える庭は、施設の遊び場ともなっていて、ちょうど、小さい子供達が、積もった雪を使って団子にしたり投げ合ったりして騒いでいるのが見える。ほとんどが、彼女の孫達だ。彼女は、双子や三つ子を含め、17人の子供がいて、既に成人し、様々な職場で働いていたり、冒険者をしていたりしている。一人は、竜王都にある4つの執政府の長をしていたりする。屋敷には学院を併設し、孫達を含め、かなり100人ほどの子供たちを預かっているため、孫の数となると、私自身が良く分からないほどになっている。半分くらいは孫のハズだ。(苦笑)彼女は、そんな子供達の姿を見ながら、嬉しそうにしている。
「どうだ、気分は」
「イットウ様・・・」
私の名は、イットウ。今は、イットウサイと名乗っている。昔、子供の夢を見ていた世界では、伊藤一刀斎と名乗っていた。前世なのかも知れないが、良くはわからない。
「だめだ。寝ていろ」
起きようとするのを止めるが、どうしても体を起こそうとするので、抱き起して、そのままギュッとしてしまう。
「マーヤ」
「はい・・・」
「お前は、俺の妻だ」
「はい。ありがとうございます」
「・・・マーヤ」
「イットウ様。あまり気にしないでください。本当に私は幸せなのです」
抱きしめられたまま、嬉しそうに話しだす。

エピローグ? その2a

 赤子をあやしていると、青白い肌をした魔族の女性が寝室に入ってきた。少し、緊張している。魔力に強い魔族といえど、純血に近い竜族の赤子が持つ、凄まじい魔力の暴走を笑って対処することはできない。それこそ命がけで結界を張らねば保てないほどの暴走が数時間おきに発生する。赤子が落ち着くまでは、両親にしか育てられないという状況であった。
 アカネが生まれてからは、母親である羌族の玲と自分の三人で寝るようになった。歳を重ねた後で生まれた子供ということもあって、可愛くて仕方ない様子のバカ親なのだが、両親以外では近付くの難しいこともあって、両親の下で育てられている。
「おちつきましたか」
赤子の雷は、天蓋付きのベットをボロボロにしている。シーツや布団などは、何箇所か黒こげになっていたりする。しかしながら、両親には傷ひとつなく、赤子は笑っていた。
「もう大丈夫かな、玲」
「えぇ、まぁ大丈夫でしょ。アカネは良い娘ですから」玲は、蜷局を巻いた姿から人型に近づいて、娘を抱きあげつつ、あやし始める。異種混血の問題は、こういったところにもある。竜族だけではなく、獣族や魔族は、身体構造が異なる。相手の姿に変化することで、性交を可能とするが、人族は変化の能力が無い。同じように、妖族や鬼族の場合は、姿が人族に近いため、変化しなくても性交が可能。ただ、妖族や鬼族の場合は、純血を基本としているため、他部族との混血は少ない。
「朝食ができました」
「あぁ、何時も通りマーヤの部屋に頼む」
「はい。すでに用意はしてあります」
「マーヤの具合は」
「今のところは、お変わりない様子です」
「そうか」
 少し、遠い目になる。
 マーヤは、獣族だが、長命種ではなく平均寿命20年ほどの短命種である。すでに齢23歳を超えている、人族だと100歳を超えたくらいだろうか。数年前までは、一緒に旅をしたりしていたが、今では体力的にはかなり厳しく、今も少し熱が出ていて床についている。

エピローグ? その1

 一人の人族が眠っている。天蓋付きのベッドで、齢60を超えたくらいであろうか。しかしながら、今なお、壮健な様子で眠っていた。傍らには、赤子が一人眠っている。
「ん・・・そろそろか」
「・・・そうですか?」
 天蓋付きのベッドを巻き込むように、蜷局を巻いている竜族の娘が目覚める。紀元生まれの娘は、既に2674歳であるが、竜族しかも純血種の羌族の娘であれば、一万年程度の寿命があるし、徐々に伸びてもいるらしい。今の竜王は、既に16000歳を超えるが、まだまだ壮健である。
「あぁ、もう少しだ」
見守るのは、横に眠る娘だ。姿は、人の子供と同じだが、竜族の証ともなる角が左右に伸びてきている。眠っていた娘が、少しむずがると、大泣きを始めた。竜族の赤子らしく、泣き始めると魔力が溢れ、この娘の場合は、雷となって暴れ出す。かなり能力が高くても、この雷に耐えることは難しい。しかしながら、老人は、自分に向かってくる雷を手で弾きながら、笑っている。母親の方は、赤子の雷を気にせずに受け止めながら、あやし始めた。
 羌族の娘は、赤子をあやし始めながら、同じように笑っていた。
「相変わらず、見事なものですね」
「まぁ、娘に殺される親には、まだなりたくないからな」
おさまりつつある赤子の泣き声と、両親の笑い声が響いていた・・・

2014年2月13日 (木)

すべての始まりは「契約」から その3

 竜王都と聖都
 1万年ほど前の竜王都は、今の聖都にあった。聖都とは、竜王の住む都であり、竜族の都であった。現在の竜王都は、聖都の南に位置する港町に新たに建設された都である。竜族の法司法院を中心とし、六大氏族共同で設立した「法典院」を頂点として整備された都となっている。竜王都の名前が残っているのは、竜王都以外での「集会」の開催を竜族が認めなかったためである。
 これは、数千年前より断続的に発生した、魔族と人族の戦いや、獣族と人族の戦いなど、六大氏族同士の大規模な戦争の中で、大量の孤児や捨て子、混血が生まれ、それらが「集会」における「契約」の結論として、聖都に集められてしまったために純血を遵守し、ほとんど無償で孤児を引き受けていた竜族が怒り、「契約」にて、殺せぬが育てぬという議題を持ち出したため、「集会」が紛糾し、「契約」のための「集会」が、一年の長きに渡る激論が繰り広げられた。この時の六大氏族が規定した会議これが、「契約」を「遵法」として明文化され、最終的に六大氏族に承認された。これが、遵法紀元である。
 遵法紀元より、「集会」を重ねるに従って、六大氏族は、法典院や養護施設だけでなく、「集会」の中で議決された施設が拡充され、施設の拡大に伴って、市街地が拡充され、ひとつの巨大都市が形成されていった。
 紀元2674年には、竜王都は、住民百万を号する巨大都市となっていったのである。

2014年2月12日 (水)

すべての始まりは「契約」から その2

 「契約」のための「集会」、The Quriltai of the Contractそのものは、短くて3日くらいで、長くても一週間程度で終了する。全部族の反対がなければ、提出議題が採択されるため、審議はそれほどかからない上、審議が必要な議題は、六大氏族内で解決できない議題に限られている。しかしながら、審議が早くても後に問題を残すのは避けるため、Negotiationがより重要となり、議題を提出する部族は、かなり早くから氏族間の調整に入っている。
 議題は、あくまでも「契約」に関してなので、氏族間の紛争や戦争は、審議対象とはならない。紛争や内乱、戦争の中で、「契約」に対して違反した行為が存在しているかどうかが審議対象となるのである。大半の議題は、捕虜の扱いや人身売買、薬物に関する事柄になる。
 審議で多いのは、異なる部族での婚姻等が生じた場合の取り扱いである。例として、魔族が、人族との間に子供が生まれた場合、「契約」上は、子供は魔族であり人族となる。親権は、両方となるのだが、子供をどちらの氏族が引き取るかというのは、審議事項となる。
 「契約」では、男女の婚姻が最上位にくるため、両親の意思が同じであれば、審議の必要はなく、両親の意思が優先される。しかしながら、両親の意思が異なる場合、審議となる。両者の話し合いが一致しない場合は、子供は「集会」預けとなり、子供が成人した時に、子供自身が"氏族"を選択することとなる。竜王都には、そういった子供達のための施設が設置され、六大氏族の拠出金で運営されている。
 元々、平均寿命が数千年に及ぶ竜族は、部族数は少ないが、知識と経験の宝庫でもあり、元々六大氏族の中で、唯一文字を扱い、知識や魔道に長け、圧倒的な戦力を保有していたため、竜王都には教育施設が集中していた。こういった事情もあり、竜王都は、六大氏族に属さない人が、竜族の元で住む都ともなっていて、竜王都の人口は、百万を超える世界最大の都となっていたのである。

2014年2月11日 (火)

すべての始まりは「契約」から その1

The Quriltai of the Contract
「契約」のための「集会」
 祭りのような騒ぎである。かつて、竜、人、魔、獣、妖、鬼の六大氏族が集い、「契約」を交わした。それを始まりとし、年に一度、竜王都で会議が開催されている。六大氏族が中心ではあるが、すでに「契約」より数万年を超え、会議そのものは、「契約」の遵守に対して、違反がなかったどうかの確認のみとなっている。
 「契約」は、大地に住むすべての氏族が死に瀕したことに始まる。極寒の黎明が大地を多い、死に瀕した六大氏族は、互いを支え助け合うことで、なんとか命を繋いだ。この際に結ばれた「契約」を、Contractと呼び、氏族の集まりである「集会」をQuriltaiと呼んだ。これが、The Quriltai of the Contractである。
 「契約」は、議題は、少数部族からであっても六大氏族の何れかが承認すれば、提出されることとなる。そして、提出された議題は、「集会」で六大氏族すべてが反対しない限り採択される。この「契約」は、地上いかなる部族、宗教、国家に関係なく遵守されなければならない。「契約」に対する違反は、死罪となっている。これは、六大氏族であっても例外は無い。「契約」の基本は、氏族を死に追いやる戦争の禁止、少数部族の保護、捕虜の虐待や奴隷の禁止、薬物の乱用禁止、相互支援の奨励といった項目が規定されている。人の定義は、言葉を持ち理解し、道具を操る能力を持ち、「契約」の遵守を宣言した5000名以上の町は、「契約」に記載される少数部族の保護が適用されるため、武装を放棄し「契約」遵守を求めた町に対して、戦争し滅ぼしてはならない。
 参加する六大氏族は、人口の増加と共に徐々に増え、すでに百を越えるが、竜族が5部族、人族が38部族、魔族が28部族、獣族が31部族、妖族が3部族、鬼族が9部族と種族によって構成はかなり異なる。この他にも、様々な部族が集まるため、市場や芸人達が竜王都い、祭りのような活況を呈する。これが、「契約」のためにおこなわれる「集会」となっている。

2014年2月 9日 (日)

雪景色の中で

 都会では無い、雪景色の中で、雪を踏みしめ、滑る道を避けつつ職場に向かう。
 久しく、南国の島で過ごした身には、しばらくぶりの雪であったが、どうやら20年ぶりくらいの大雪なのだそうだ。田んぼに積もる雪に、道に残る轍の跡。歩けば雪に足跡が残り、ちょっとノスタルジックな雰囲気が良い感じであった。土日出勤というのは、とりあえず、考えないでおこう・・・
Snow01
Snow02

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