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2016年2月24日 (水)

戦国転生宵闇綺譚01

 あやかし達が人の近くで暮らし、時には夫婦となったりしている。そんな日本を描いてみました。
 背景譚が序章となります。
 歴史ifファンタジーとして実装するのが、あやかし達の居場所である。鬼、河童、雪女といった様々な妖怪変化が住んでいたはずなのだ。そういった妖怪変化が実在し、魔道を用い、住まえるような世界でないとつまらない戦国と言える。山々は竜が住まい、鬼が集い、狗神や狐狸が駆け抜ける。そんな世界が好きで描いてみました。

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序章

 さて、ようやく描き始めます。
 個人的には、戦乱の幕開けとも言える、北条早雲あたりとかが時期的には好き。
 下克上の代表は一揆であり、戦国の世で一揆の目的は、食い物が無くて、食い物を奪う者への反逆であった。これは、戦争についても同じで、収奪的な要素が強かったのも、自分の民を食わせるために、他国の民から食料を奪うための戦争ということになる。
 参加する者達にとっても、飢餓に苦しめば、戦い奪う先に、生を得るという発想も生まれ、宗教的に後生御免(死後に極楽往生できる)を持って、戦いに追いやる力となっていた。
 正史の信長の戦争が、基本的に本願寺との闘争であったのは、権益という側面もあるが、一揆という下克上を推進する側と、撲滅する側との戦いであったとも言える。
 ここは、正史ではない、戦国ファンタジーifなので、正史上にも存在した人物については、背景はある程度そのままですが、かなり歪んでいます。また、ファンタジー系の亜人が正史上の人物と被ったりしますので、正史のキャラ好きの方は、覚悟をしてください。
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 戦国時代は、戦乱明け暮れる世を、江戸時代くらいから振り返って見ると、戦国という言い方ができるのだろう。そこから、戦国時代という名称そのものが生まれた。平安時代から鎌倉時代という、武士の幕開けを迎えた武家が、鎌倉時代の終わりに南北朝争乱から貴族による揺り戻しやらを乗り越え、室町時代を形成していく。
 されど、その中では、様々な権力闘争があり、武家らしく内紛が戦闘となり、戦争となるような武家の時代を構成していった。武家の時代というのは、本質的には、闘争の時代と言えるだろう。闘争の時代は、大きな流れを生み出していった。そして、中央権力が失墜していく戦国乱世となったことで、様々な者達にとっての変化の時代となっていったのである。


 もうひとつの流れが、鬼や土蜘蛛、河童といったあやかし達の流れである。彼らは亜人と呼ばれ、同じ地域に住みながら異なる種族というイメージがあった。あやかしの力を持つ彼らは、戦争の中で頭角を表し、時には地侍から地頭と呼ばれるようになった者達もいた。また、闇に潜み、闇に紛れやすいことから、忍びや乱波といった者達になったものもあった。結果として、古来より混血も進み、人と変わらぬ姿を持つ者や、異形の姿を持つ者も多く、良いにつけ悪いにつけ、様々な軋轢の原因ともなっていた。


 武士を名乗れば、武士となれた時代。時代を斬り拓く時代は、様々な存在にとって、転機でもなったのである。
 「武士の本懐」という言葉がある。武士によって、様々な捉え方をされているが、本質的には、内紛や戦闘という戦争が身近にある世界で、己や一族の命や命運をかけて戦い続けざるを得なかったモノ達の描く、「本懐」とはどのようなものだったのだろう。
 当たり前だが、戦国大名と呼ばれている者達は、自分自身が戦国大名と呼ばれていることを知らない。


 古代から室町までの流れは、中央権力の象徴である、天皇家にしても、将軍家にしても、統治能力を維持していた時代であった。この統治能力は、家と領地を保護するというものである。南北朝より始まり、室町の流れの中で、中央の統治能力は徐々に低下し、嘉吉の乱(1441)で生じた将軍義教暗殺は、権威失墜の象徴とも言える事件であった。
 つまりは、当時の体制として、家の相続と守護といった役職の相続は別であった。関白が藤原の流れから選ばれるとしても、それは明文化されているわけではなく、今までの権力闘争の流れの中で勝ち得た権利に過ぎなかった。
 中央の役目とは、権益が守護や地頭について回るとした場合、彼らの利害関係を調整することであり、この役目が果たせなければ、地方政治の安定は得られなくなる。結果としては、地域での政治闘争がそのまま地域紛争となり、軍事闘争となり、戦争という形で表面化することとなる。これが、「戦国時代」である。
 応仁の乱(1467?-1477?)といった将軍家や管領家の家督争いが、中央の調整機能を麻痺させ、自己修復を困難にしたに過ぎない。

 好男子ではなく、講談師という奴は、見てきたように嘘を吐くと申しますが、それも時には、真実が混ざっていたりするものであります。

 ある時、というか一人の赤子がおりました。どこにいたかは、とりあえず内緒です。その赤子をこともあろうに、ある神様が何かの弾みに赤子として入っていた籠ごと
「ごめん。間違えて蹴飛ばしちゃった」
で飛ばされたのは、皆さんにとっての正史世界となります。赤子なので、ものごころは付いていなかったと思いますが、この赤子、困った顔のばあちゃんと、神とやらの姿は見えず、声は覚えていたそうであります。
 籠に入ってた赤子であったことから、この世で、施設に引き取られ、井上という施設長さんが、|井上 篭《いのうえ こもる》と付けたそうです。平成とかの御世が始まる頃であったそうです。
 孤児でもって育ち、里親とかいたけれど、何か人と違う違和感がある中で、中学を卒業し、高校生となったそうです。それなりに、普通の生活?を楽しんで、今日から高校生という時、
「やっとみつけたぁ。御免ね」
ひょいっと巨大な手につままれたように、戻されたのである・・・オイッ!

 そのうえ、神様につままれて、なんだか良くわからない空間を通過しているような感じの中で、
「あ、落としちゃった・・・テヘッペロ・・・」
 怒呶々怒呶々怒呶々怒呶々怒呶々・・・殴ってやる!と怒りに任せて、
「ざけんな、ボケぇ!!」
と叫んだそうですが、あっさりと異世界に落とされたしまいました。

 さぁって、始まるよぉ・・・

 ・・・バッシャーンと水飛沫をあげて、落っこった。
 空間から突如として落とされた場所は、そんなに高くもなかったようなのだが、滝壺のある湖で、そのまま沈んでいったので、慌てて泳いで湖面に飛び出たら、なんだか良くわからない柔らかくぷにぷにしたモノを掴んでしまった。
「何しやがるッ」
という女らしき声と共に、ドゴっと馬鹿でかい金棒で殴られたように、なんか吹っ飛ばされた。

「ご、ゴメン! イタァ・・・」
壁に打ち付けられ、痛めたものの、なんとか体を起こした篭は、声のした方を見た。湖から上がって来た女の人を見た。

(女の人の姿は、何も身に着けていなかった。うん。あれは、裸だ。しかも、とっても女性らしいしなやかな曲線を描いて、ボンっ、キュッ、ボンっってこんなのかなぁという見本みたいな裸だった)


「なにをジロジロ見ている。俺のような大女が珍しいか?」

「そうじゃない、綺麗だなぁって、」

 篭の身長は、167cmで70kgと特徴の少ない日本人体型だが、自分で大女と言っている彼女は、頭ひとつ高く、190cm以上はある。高いといえば高いけど、柔らかいし、大きいし、まぁ、体重はちょっとありそうだけど・・・
「何?」
視線を虚空の講談師に向かって飛ばされやすと、あっしゃぁ死にそうです。すみやせん。平謝り致します。m(__)mスミマセン

「綺麗・・・ってあたしがかい」
「うん。なんかとっても綺麗だ」
(ほんとに、凄く綺麗・・・炎が周囲に浮かんでて、白い肌に映えて、黒い髪も艶やかに長くて、瞳が強くて・・・あれ?額に角っぽい赤い突起がある)

 ほい。長い黒髪をオールバックにして後ろで縛っているので、額にある角が目立ちます。鬼族は、古代より倭国に住まう者達で、山々を中心に暮らしておりました。時に、人と交わり、混血が進んでいたりもするので、山岳から平地に居を移した者達も多かったりします。
「これが、気になるかい。鬼族だよ、あたしは」
「鬼かぁ、なんか思っていたのとイメージが違うなぁ・・・こんなに綺麗なんだ」
「・・・嘘ではないみたいだね」
探るような、言葉がでる。
「嘘じゃない。本当に綺麗だもの」
「ま。綺麗と言われるのは、嬉しいもんだけど、あんまりジロジロ見られるのは、気に入らないねぇ」
「ごめんなさい」
慌てて、後ろを向く篭であった。
(体を拭く、衣擦れの音がして、なんか音がエロく感じる)
がちゃがちゃと金属音が響く。
(・・・(??)・・・)
「もう、こっちを向いてもいいぞ」

 そこに現れたのは、和装姿(かっこ美女)に、大きな胸の膨らみに合わせて重ねが朱糸に織られて、腰が絞られた鎧を着けた鎧姿があった。
「格好良いッ」
「そ、そうかい・・・」
なんか、少し照れた感じになった。可愛いぞ
「あたしは井伊の|次郎冠者《じろうかじゃ》だ、お前は」
「|井上篭《いのうえ こもる》・・・良くわからないけど、なんか落とされた」
「確かに・・・あたしが|水垢離《みずごり》をしようと滝に向かったら、落ちてきたからな。ここは洞窟の中の泉だよ、天上があるし壁もあるが、人が隠れられるほどの場所は無い」
「えっ・・・」

 言われて、周囲をキョロキョロすると、炎が浮かんで照らしているが、鍾乳洞の中にできた湖のようだ。天上から落ちる水飛沫が舞って冷たい・・・
「くしゅん・・・寒ッ」
緊張していて気づかなかったが、高校の制服だったんだ。入学式に行く途中で・・・体をつままれた感じで持ち上げられて・・・新品だったんだよなぁ、制服・・・
「その姿は、服のようだな?火をおこそう。温まると良い」
さて、次郎冠者と名乗る女性は、そのまま周囲を照らしていた、火炎を集めて地に置いた。
「妖術・・・鬼だから鬼術かな?」
「ほぉ、昔の呼び名を知っているのか、私は鬼族の血が強く出ているが、天狗の血も混ざっているらしいからな、魔道と呼ぶことが多い」
火にあたりながら、話を始めた。
「お前の格好は、珍しいな。どこから落とされた」
「平成からかな?」
「濡れていると、風邪をひくぞ、脱ぐといい」
「えっと・・・」
まぁ、とりあえず、上着を脱いで、Yシャツを外すとそのまま座ろうとすると、
「ダメだ。まだ脱いでいない」
「え。それは・・・」
「私が見られたのだ、お前も見せろ」
そのまま、後ろに回られ、脱がそうとする。鎧越しなのが、残念だけど、膨らみが判る感じが、とってもヤバイ篭であったが、力が強く、あまり抵抗できず、そのまま脱がされていった。
「ゴメン、ちょっと許して・・・」
「ほぉ、本当に綺麗だと思ったのだな。凄いいきり立ちだ」

 ま。何がとは聞かぬが花というものでしょう。全裸にされて、真っ赤になった篭を背中から抱き寄せ、見下ろしながら、次郎冠者は、いきり立ったモノを眺める。
「あの・・・」
「なんだ」
「恥ずかしいんですけど・・・」
「お前の体は綺麗だな、傷もほとんど無い。私を綺麗といって、いきり立ってるんだ。私は、嬉しいぞ」
「えっと・・・」
「どうだ。お前を抱いていいか」
「ハぁッ・・・何それ」
「良いか、悪いかだ、どっちだ」
「それは、嬉しいですけど・・・」
(なんか凄い、経験するんだ。でもあれ、さっき鎧着けちゃったよね)
「ふ。心配するな。下はすぐ取れる」
しゅるしゅる衣擦れがすると、次郎冠者の下帯が落ちる。袴は着けてなかったらしい。


 そして、篭は押し倒されて、鬼に食われてしまいましたとさ。

 好男子ではなく、講談師という奴は、見てきたように嘘を吐くと申しますが、それも時には、真実が混ざっていたりするものであります。

篭は、次郎冠者に正面から抱きつく感じで、馬に乗せられて、駆け出した。
(お尻が、痛いーーー)
「はは、馬に乗るのは、初めてか」
「は、は。い。」
「少し、我慢しろ、日が暮れるまでには、城に着きたい」
「は、痛ぁ・・・」
「しゃべらなくて良いぞ・・・ははっはは」
声高に叫び、駆け抜けていく。

<閑話休題?>

 なんかわけのわからないうちに、神様らしき存在に蹴飛ばされ、つままれて異世界に飛ばされた僕、|井上篭《いのうえ こもる》は、落っことされた異世界で、美女の艶姿に出逢い、その場でエロイ意味で食べられてしまいました。
(でもその美女は、なんと、鬼だったのです・・・かぁ・・・)
 何か良くわからないまま、ただ呆然と時が過ぎて夜になっていた。人間というものが、想定できない衝撃を受けると、思考回路が停止するといいますが、まさに、そんな感じで過ごした一日だったと思われる。

 目が覚めると、まだ周囲は暗く、傍らにぷにぷにしたものが、頬に当たっていた。あらためて、思い出すと、次郎冠者さんは本当にきれいな女の人だった。大柄なのは確かだけれど、なで肩から胸囲よりもボリュウムのある胸はもの凄く、腰のくびれは引き締まり、腹筋がしなやかに描かれて、豊かだけど張りのある尻。ボン・キュッ・ボンってこんな感じという見本みたいな艶姿だった。
 褥の中で、疲れるまで絞られて、そのまま眠ってしまったものの、胸に頬を挟まれたままで絞められると、そのままあの世に逝ってしまいそうなところで、目が覚めた。
 柔らかな膨らみに包まれて、ようやく、異世界に来たんだなぁと感じた。

「起きたのか?」
「ごめん。起こしちゃった?」
「気にするな、こんなに気持ちが良いのは初めてだったから、嬉しいんだ」
「・・・できるだけ、頑張ったけど、僕、初めてだったから、うまくできたかわからないよ?」
「大丈夫だ。問題ない」
「そぉ、なの」
「あぁ」
軽く、口づけを交わすと、
「神隠しにあったとか言ってたが、どこから来たんだ」
「んー。三千世界っていうか、この世界じゃないところかな」
「ほぉ、三千世界って、そんなにあるのか?どんな世界だ?」
「三千っていうより、無数にあるんじゃないのかな。僕のいた世界では、|戦《いくさ》は、いろんなところで続いているけど、俺が住んでた国は数十年|戦《いくさ》が無かった国だったよ」
「|戦《いくさ》がないか・・・つまらんな」
少し、哀しそうな顔をする。
「|戦《いくさ》が好きなの?」
「好き嫌いというより、困るという方が正しいかな」
「困る?」
「あぁ、あたしは、戦うことしかできぬ。一族を守るためにも、戦って力を示せる世でないと辛いな」
「今は、戦って、力を示せる世界なの?」
「まぁ、戦国の世って奴だからな」
「ねぇ、次郎冠者って名前は、代々、続いているの?」
「ん。代々ではないな。親父殿が御館様に従い、一門衆から嫁を貰って、遠江介を継ぐ|許《ゆるし》を貰ったからな、子供がなかなか生まれなかったから、従兄弟の直親を養子として太郎冠者と名づけた後で、あたしが生まれたので、次郎冠者となって人質として御館様に出された」
「人質だったの?」
(あれ?・・・次郎冠者もそうだけど、井伊の次郎って、井伊直虎だよな。人質とかになってたっけ?)
「あぁ。表向きは、若殿の許婚としてだがな。何かあるのか?」
「ごめん。変なことを聞くけど、貴女の名前は、井伊直虎じゃないのかな?」
「直虎?昔は、虎姫って呼ばれたこともあるけど、女名は祐だし、若殿の名を貰ったから|井伊直真《いい なおざね》だぞ? でも、直虎という名前は格好いいなぁ」
少し、嬉しそうに笑う。
(えっと、確か大○ドラマでやってたのが、井伊直虎だったような気がするけど、遠江の井伊家の女性武将って、直虎だよな?既に歴史が変わってるのかなぁ・・・)
「僕がいた世界でね。昔話に井伊直虎って女武将がいたの。井伊家の女当主ですっごく強かったってお話だったんだ」
「昔話?」
「五百年くらい昔になるかな?正確には良く知らない。当時は、女の人が当主になるのは珍しかったから、有名だったよ」
「すると、お前は、五百年先から来たということか?」
「でも、かなり違うと思うよ。鬼とか天狗は居なかったし・・・この世界には、|渡辺綱《わたなべのつな》っていなかったのかな」
(大江山の鬼退治とか無かったのかな?)
「ん。|渡辺綱《わたなべのつな》って、鬼を嫁に迎えた源氏のことか?」
「鬼を嫁?」
「あぁ、すっごく良い男で、強くて、鬼族の|祐姫《ゆうひめ》を嫁にするために、大江山に住まう鬼族の長|酒呑童子《しゅてんどうじ》と戦い、勝って|祐姫《ゆうひめ》を妻に迎えたという話だ。良く、お婆様が聞かせてくれた、鬼と人を繋いで、渡辺党を組み上げ、内裏警護まで勤めたって話だ」
(良い男って、確か、渡辺綱は、光源氏の実在モデルだったような記憶があるから好い男だったのは間違いないだろうけど、やったことは"鬼退治"だし、そっかぁ、そこから違うんだ・・・)
「お前の世界では違うのか?」
「|酒呑童子《しゅてんどうじ》を倒して"鬼退治"をしたのが、渡辺綱って名前だった」
「"鬼退治"?鬼を嫁に迎えたのに?」
「鬼を嫁に迎えたって話は伝わってない。僕の世界だと、上手く出逢えなかったのかな?」
「そっか、残念だ・・・じゃぁ、人は鬼や狐狸達と一緒には暮らしてくれないのか?」
なんか、すっごく落ち込んでる・・・困った。少し、彼女にぎゅっとして、
「僕の世界では、そうなっちゃったね。だけど、僕は、この世界に来て、あなたに出遭えたよ。僕は、渡辺綱みたいに強くないし、戦には役に立たない子供だけど、|次郎冠者《貴女》が好きだよ」
「・・・すまない。ちょっと子供の頃に夢見た話だったからな。あたしの名前は、大江山の鬼姫からとった"祐"だって、お婆様に聞いてたからな。この世界では、昔、人が鬼姫を嫁に迎えた。今度は、|あたし《鬼》が、|人《おまえ》を婿に迎えてやる」
笑うとなんか可愛い
「可愛い・・・あ、ごめん」
「嬉しいよ・・・」軽く口付けをして、「昔は、背もそれほどで高くなくて、若殿と同じくらいだったから、抱かれたけれど、背が高くなり力も強い大女になってからは、嫌がられたからな」
「許婚だっけ」
「あぁ、今でも駿府や今川の代官がいる浜松では側室扱いだな」
「若殿は好き?」
「ん。妬いてくれるのか?」
「妬けるよ。でも、冠者として仕えているから、仕方ないよね」
「まぁ、今川家に仕えるようになったのは、祖母の代からだが、あたしの男でもあるし、兄上のことでは迷惑をかけてるからな」
「兄上?一人娘じゃ。養子に迎えた従兄弟殿のことか」
「あぁ、従兄弟殿の父上が、小野道高の|讒言《ざんげん》で|謀叛《むほん》に問われた時、|若殿《うじざね》が庇ってくれてな。所領は親父殿に預けられ、父上の直満殿は浜松城預かりとなって、兄上が私の代わりに人質として送られた。本家は廃嫡となったけど、あたしを次期当主にして井伊家を守ってもらった。|千千代《ちずよ》様の助けもあったからな」
「|千千代《ちずよ》様?」
「あぁ。もともと、三河松平党の当主清康様が亡くなられ、広忠様も亡くなられ、残された|千千代《ちずよ》様が、当主となり、あたしと同じに若殿の側室に入った。千千代様は、今は元服して松平次郎三郎元信と呼ばれている。三河松平党の総領姫で。あたしなんかと違って、小柄で可愛いからな、北条から来た正室様と同じく、若殿に可愛がられている」
(あれ。三河松平の総領って、家康だよな?今川義元の生きてた頃に元信って名前で元服したんだっけ。あれ、えっと、時代的には、今川義元が生きていて、氏真が若殿。信長とか秀吉とかいるのかな?)
「|千千代《ちずよ》様が、どうかしたのか?」
「うん。松平の総領は、僕のいた世界だと男だったんだ。織田に捕まったり、今川で人質だったり、子供のときに大変な思いをしていたって話を聞いたことがある・・・」
「大変な思いはしてきたぞ。一度は、養母の父親に裏切られて、織田に人質として送られて、安祥城落城の際に、人質となった信長の庶兄信広と引き換えに今川家の人質になった。今は、若殿の側室と松平党の当主を兼ねているな。」
(あ。側室かぁ、氏真って良い奴なのかな?義元が死んだ後は、ボロボロになったような気がするけど。信長はいるのか・・・桶狭間って何時だっけ?覚えてないなぁ)
「どうした。やっぱり、嫌か?自分の女が他の殿方の話をするの」
心配そうに、のぞきこまれる。
(いや、そりゃ。自分の彼女が、誰かの奥さんって話だから。寝取られ感・・・あれ、僕が寝取ったことになるのかな?それよりも、桶狭間はまだ起きてないみたいだけど・・・そろそろじゃないのか?)
「そりゃぁ、自分の抱いている相手が、他の男に想いを抱くっていうのはキツイけど、それはなんとか我慢する。そうじゃなくて、気になることがあるんだ」
「気になること?」
「三河の隣は、尾張で、そこの当主が信長なんだよね」
「あぁ。一時は、三河安祥城を奪って、制圧されかけていたが、今では三河を雪斎師に奪われ、知多を含めた尾張の南側が徐々に御館様に抑えられてきている」
「津島は?」
「あぁ、津島の湊は、まだ織田方だな」
「知多を含めて、伊勢湾の海が持つ利益を奪うと、織田と戦になる」
「そうなのか?」
「うん。織田の力は、尾張の田畑と津島からの運上金でまかなっている。津島の運上金は、伊勢湾を航行する船が生み出す利益。これを奪われたら、織田は、守護代としては家格を維持できない。きっと死に物狂いで戦うことになる」
「ほぉ、その鍵が津島湊ということか」
「うん。伊勢湾を押さえるために、尾張に今川勢が大規模な戦を仕掛け、義元様自らが出陣されて、今川勢が尾張に広範囲に占領展開している隙間を浸透突破して、義元様の本陣が襲われて、義元様が討死にする」
「御館様が討死だと!」
起き上がって叫ぶ
「虎様。何かありましたか?」
外から声がかかる。月明かりに、狐の影姿が障子に映る。(傍にいたの?)
「あ。すまん。|彩女《あやめ》か?」
「はい。お起きになられた様子です。何かお持ちしますか?」
「いや、大丈夫だ。すまん。|狗賓《くびん》はいるか?」
「は。お傍に・・・」
(床下も?忍者っていたのかな?)
「すまぬ。しばらくお前以外は、誰も近づけないでくれるか?」
「はっ」
「|彩女《あやめ》も他の者を下げてくれ。炉壷は大丈夫か?」
「なんの。"四方盃"程度、私一人で十分にございます」
「すまん。頼む」
「ごめんね」
「いや。あたしが、声を荒げてしまっただけだ。宵闇であったことが幸いしたな。だが、それがお前の世界でおきたことなのか?」
「うん。僕の世界での起きた出来事だとそうなっているけど、どこまでがここに起きるかは判らないよ。既にかなり史実と違ってきているから」
「あぁ。それでも、尾張との|大戦《おおいくさ》で敗れるのか?」
「うん。だけど、軍略では義元様の圧勝だったから、少数の部隊で、軍の間隙を抜けられなければ、負けたりしないとは思う」
「つまり、織田は、軍の間隙を突くということか」
「僕の友達が、駿府の出身でさ、義元様が好きで、信長に負けなければ、今川が幕府を創ったんだって言うのを延々と説明されたことがある」
(うん。間違ってないハズ)
「ははは。だとすれば、織田に負けなければ良いってことだな」
「うん。信長という天才と、義元という天才がぶつかったのが、尾張での戦いなんだって」
「信長は、"うつけ"って呼ばれているぞ」
「そうでもないさ。あれでも、バラバラになりそうな尾張一国をなんだかんだと、抑える力を得ているんだよね」
「そうだな。確かに、尾張をまとめ、子飼いの兵を集め、少数だがかなりの戦力を集めている」
「駿河、遠江、三河に加え、尾張、美濃、近江を征すれば、東海道、東山道、北陸道を抑えられる。つまりは、東国を威圧する力を得る。後は、京より西を征すれば、東国を下して、天下を征せられるって言ってた」
「お前の世界で、実際に天下を征したのは、信長なのか?」
「ん。今川を破り、松平や浅井と同盟、斉藤、六角、朝倉を征して、京に乗り込み、本願寺や毛利、長曾我部といった西国を叩こうとしたところで、謀叛にあって敗死。信長の部下だった秀吉っていうのが、信長の仇討ちをして、天下を取る」
「井伊は、どうなる」
「今川が敗れた後は、|千千代《ちずよ》様に仕えて、代々、天下を支える家となる」
「|千千代《ちずよ》様?」
「うん。秀吉は、後継ぎに恵まれなかったので、後継者争いが起きて、最終的に天下は、|千千代《ちずよ》様が取る」
「今川が敗れたとすると、氏真様は、死ぬのか・・・」
「違うよ。氏真、様は、生き残って、|千千代《ちずよ》様の主家として、確か朝廷との仲介とかの役職に就いたと思う」
(くそぉ。やっぱし、上手く言えない)
「そうか。氏真様は、言いにくいか」
「うん。やっぱし、想い人の敵って感じがして、ごめんね」
「仕方ない。お前は、あたしの男だけど、あたしは、若殿の女でもある。でも、|井上篭《いのうえ こもる》」
真っ正面から僕を見据える強い目。
惹き込まれそうに、強くて魅力的で、褥に座り、衣を着ていない白い肌が、宵闇に浮かぶ。大柄で、頭一つ上から見下ろされるけど、真剣な瞳の中に魅入られるように答える。
「あたし|井伊直真《いい なおざね》は、|井上篭《いのうえ こもる》を男とし、生涯離れぬことを誓う。この身は、主人もいるし、戦に敗れれば、雑兵に犯されることもあるだろう。それでも、お前をこの身の半身として誓いたい、良いか」
「僕にできることは判らない。何かの役に立つかも判らない。それでも、貴女が望むなら、僕、|井上篭《いのうえ こもる》は、|井伊直真《いい なおざね》の男になることを誓う」
「「ありがとう」」
そのまま全裸の男と女は、近づいて、口づけを交わす。

「あ。でもさ、直真って言い難いから、"|祐《ゆう》"って呼んでも良い?」
「褥の中でなら、あたしはお前の女だ。良いぞ」
「|祐《ゆう》・・・」
「|篭《こもる》・・・」
ちょっとkick offの雰囲気から、二人の世界に入っていく

そして、二人は、とっても仲良しになったそうな。

>>>>>
 さて、これで序章は終わりとなります。
 あやかしを含めた戦国乱世を描ければと思っております。
 井伊家一党が、遠州を支配した状態で、今川義元の配下となると、三河松平と同じく、直虎(この話では直真)は人質として駿府に置かれ、氏真の側室になっていたように思います。直親が養子になっていて、側室ということになると、小野道高の讒言から謀叛まで持っていくのは難しくなるので、廃嫡から、直虎(この話では直真)を次期当主として、血縁を結ぶという流れになるとしてみました。


<追伸>
 なんかしらないうちに、井伊直虎さんが、某国営放送の大○ドラマで主役なのだそうです。好男子ではなく、講談師という奴は、見てきたように嘘を吐くと申しますが、それも時には、真実が混ざっていたりするものであります。
>>>>>

2016年2月17日 (水)

もののけ達と共に生きるために

知的生命体の規定:
「言語を有し、操作可能な上肢を有する生命体は、知的生命体として認める」白鳥座憲章
 この文章は、ロバート・A・ハインラインの「ラモックス」という作品での規定であるが、個人的には気に入っている。知的生命体同士の規定としては、佐藤大輔さんの「皇国の守護者」に描かれている、<大協約>の雰囲気が好みである。
 白鳥座憲章は、生命体は、知的ではあるが、言語を有し、操作可能な上肢を有することができれば、一定のコミュニケーションが可能と言うのが、考え方の根底にある。これ自体には、それほど大きな違いは無いように思う。ただ、操作可能な上肢の部分については、類似したモノであれば良いように思う。ここらへんは、どの程度までコミュニケーションが可能であるかどうかに依存してくるのだと思う。
 <大協約>は、生命体の種としての保存を基準として、戦争の制約条件としている。これは、異種族間の殲滅戦を回避する手法として用いられている。ここら辺が、一番の好みなところである。

 様々なライトノベルでは、鬼や天狗といった様々な"もののけ"達が、あたりまえのように登場する。敵役として、または主役として、共に生きるモノとして描かれるには難しいとは思う。
 日本人というのは、世界でもっとも成文法を嫌う国であるように思う。鬼や悪魔、さらにはロボットや異星人であっても、"友達"や"恋人"であると言い切る国は珍しい。そして、"友達"や"恋人"であろうと、殺し合い、憎み合えるのも、また、日本人なのだと思う。

2016年2月 8日 (月)

戦国ifモノ?描いてみました

戦国ifモノ?描いてみました

「戦国転生宵闇綺談」
http://ncode.syosetu.com/n8634dc/

 西への扉を開いた、御館様こと今川義元は、伊勢湾の制海権確保に乗り出します。弘治四年正月に義元は、嫡男|氏真《うじざね》に家督を譲り、自ら軍を発する準備を始めます。 これは、当時の軍は国人や土豪といった後代で言えば、民間軍事組織が主体であり、大軍を編成するには、非常に時間がかかりました。また、駿府-浜松が75キロで、浜松-岡崎が67キロです。一日の行軍速度が10~20キロとすると、駿府で2万を編成して、岡崎に到着するだけで、二週間くらいかかることになります。史実で、永禄元年から準備を始めた義元が、桶狭間で敗れるのが永禄三年になりますから、当時では、万単位の軍を長期間稼働させるには1年はかかかることとなります。
 当時の軍では兵站および調達機能が高くないために一か月を超える遠征となると、準備期間そのものも一年は必要と考えています。
 史実での義元公は、永禄元年頃に家督継承を発表し、嫡男氏真に駿河、遠江からの後方支援を託していました。桶狭間の戦いが永禄3年ですから、尾張への遠征について、実質3年の準備期間を設けていたということになります。

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