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June 11, 2008

エイリアシングについて

 ADコンバータを実装する場合、対象となる信号に含まれる周波数帯域とサンプリング周波数について注意を払う必要がある。左図の場合、一見すると0.01秒を周期とする信号であるかのように見えるが、サンプリング周波数を10kHzに変更して測定すると、右の図のようになる。
Photo
 900[Hz]の信号をサンプリング周波数1[kHz]で測定すると、測定のズレがサンプリング周波数と信号の周波数の引き算で生じ、あたかも差分の信号があるかのように表示される。これがエイリアシングとよばれる現象である。
Photo_2
 ADコンバータの実装は、サンプリング周波数と信号との関係について、きちんと把握する必要がある。サンプリング定理という言葉があり、サンプリング周波数1/2以下の信号でなければ、測定できないということはよく知られているが、実際に入力される信号に含まれる周波数帯域が、1/2以下であるかどうかを確認されているのかどうかについては、非常に怪しいのではないかと感じている。
 例では、300[Hz]のパルス波を1[kHz]のサンプリングで測定した結果をFFT解析をかけた場合、100[Hz]のところに信号があるかのように演算結果が表示される。これを、実測であたかもそういう信号が何かの特性であるかのような判断をされては困るのである。300[Hz]のパルス波の場合は、900[Hz]の信号が信号成分に含まれている。この900[Hz]の信号成分がサンプリング周波数1[kHz]のエイリアスとなって100[Hz]の解析結果となっているのである。画像からだと右端になっていてみにくいですが、500[Hz]のところに表れている信号もまた、300[Hz]の信号に含まれている1500[Hz]信号のエイリアスです。
Photo_3
 この結果は、非常に理解しやすいパルス波形を入力した結果なので、おそらく大半のエンジニアの方はあたりまえじゃないかと言われるかと思います。たしかに対象となる信号波形がはっきりしている場合であれば、高調波に注意しなきゃいけないということはすぐに理解できるかと思いますが、測定信号波形が実際にどのような信号化を理解していない状況で計測する場合、解析結果が本当に正しいのかどうかについては、常に生データである測定信号を確認し、判断する必要があります。
 パルス信号みたいだけど、三角波のような信号が定期的に含有している場合は、実際の波形がどのようになっているかをサンプリングレートをあげて計測するか、500[Hz]遮断周波数とするLPFフィルタをかけてから解析するといった方法で、解析結果上に現れるエイリアス信号について排除する必要があります。

 ベテランエンジニアの中には、実測をおこなう場合にフィルターを嫌う方がおられます。これは、フィルターをかけた結果として波形が歪み、解析がうまくいかなった経験が何度かある方は、フィルタを嫌う傾向が強くなります。こういったベテランエンジニアの方は、こういった実測波形に含まれるエイリアスの危険性についても承知している方が多いので、暗黙知の中でこういった部分については、解析結果から排除してから結果を出されます。
 しかしながら、こういう暗黙知部分は、往々にして明文化されず、OJTではなかなか伝わりません。結果的にベテランエンジニアに教わった若手には、フィルターを単にかけずに計測して、結果を排除せず、そのまま報告書に記載されるケースがあります。最初は、単にベテランエンジニアがチェックミスをおこして報告書が通ってしまったのだと思いますが、若手のエンジニアはそういう結果があるものだという自覚してしまうことになります。こういった状況のあと、ベテランエンジニアが定年等や転職で職場を去られて、残された若手がベテランになったとき、非常に問題のある解析結果がそのまま報告されるという状態が発生します。
 こういった状況は、伝言ゲームと同じで、時代がすすむにつれて拡大していきます。昭和50年代くらいからの好景気の中では、理系離れが徐々に進行していました。文系と理系の生涯賃金格差が1億くらいになって問題視される頃には、技術系の現場における世代格差はかなり深刻化していた状況にありました。この時期にこういった問題を経験された企業は、人事計画上でこういった問題が発生しないように対処されている企業さんが多いのではないかと思います。
 ただ、平成以降にリストラやアウトソーシングが繰り返され、派遣社員の拡大が進み、現場における世代格差が広がってしまった現場では、こういった現象がそろそろ顕在化してくる時期になるのではないかと思います。暗黙知の可視化をおこなう理由のひとつは、今回の記事のように、現場への依存性が高いノウハウをなんとかして可視化して対処しなければならないという時期にきているのではないかと思います。

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